Amazonオーディブル(以下、Audible)は、2025年の年間ランキング「Best of the Year 2025」を発表しました。 日本でのサービス開始から10周年という記念すべき節目を迎えた今年。集計期間(2025年1月1日〜11月15日)のデータを紐解くと、そこには単なる「本の音声化」に留まらない、エンターテインメントとしてのオーディオブックの劇的な進化が見て取れます。
映画化作品の圧倒的な強さ、特定の作家への集中、そしてビジネス書における「言語化」ブーム。 提供された全25タイトルのデータをもとに、2025年のトレンドを徹底解剖します。
2025年の「顔」は歌舞伎と映画の融合。『国宝』が圧巻の制覇
2025年を最も象徴するのは、第1位の『国宝 上 青春篇』と、第5位の『国宝 下 花道篇』によるワンツーフィニッシュ(上下巻ランクイン)です。
吉田修一氏によるこの長編は、2025年6月の実写映画公開に合わせて爆発的に再生数を伸ばしました。しかし、単なる「映画の予習」ではありません。本作のナレーターを務めたのは、歌舞伎界の至宝・尾上菊之助氏。 物語の主題である歌舞伎の世界を、本職の歌舞伎俳優が語る――。その発声、間の取り方、劇中劇の表現力は、オーディオブックという枠を超えた「一人芝居」の領域に達しています。 計43時間超という長尺にもかかわらず、多くのリスナーが「耳で聴くこと」を選んだのは、そこにしかない没入体験があったからに他なりません。
「宮島未奈」旋風が止まらない。トップ15に異例の3作品
作家別で見たときに、今年最も「耳で愛された作家」は間違いなく宮島未奈氏でしょう。 第4位に『成瀬は天下を取りにいく』、第14位に続編『成瀬は信じた道をいく』、そして第15位には『婚活マエストロ』と、なんとトップ15に3作品がランクインする快挙を成し遂げました。
特に「成瀬」シリーズは、主人公・成瀬あかりの独特なキャラクターとテンポの良い会話劇が、音声コンテンツとの相性抜群。ナレーションを務めた声優・鳴瀬まみ氏による軽快な語りが、移動中や家事の合間の「ながら聴き」にフィットし、シリーズを通して一気に聴き進めるリスナーが続出しました。
ビジネス書のトレンド変容:「稼ぐ」から「言語化・思考」へ
ノンフィクション・ビジネス分野(6位、9位、12位、18位など)のラインナップを見ると、2025年のビジネスパーソンの関心が変化していることが分かります。
かつて主流だった「資産形成」や「効率化」に加え、今年は「内面の言語化」や「不安の解消」にフォーカスした作品が上位に入りました。 6位の『あっという間に人は死ぬから』(著:サトマイ)や、9位の『こうやって頭のなかを言語化する。』(著:荒木俊哉)が象徴的です。AIが台頭する時代だからこそ、人間特有の「思考」や「伝える力」、そして「どう生きるか」という本質的な問いに向き合う作品が求められています。
【完全保存版】Audible Best of 2025 全25作品紹介
ここからは、ランクインした全25タイトルを順位順に紹介します。
■第1位~第5位:圧倒的熱量のメガヒット作
1位:国宝 上 青春篇
- 著者:吉田 修一 / ナレーター:尾上 菊之助
- 再生時間:21時間7分
- 魅力:映画化と共に再燃した傑作。極道の子として生まれながら歌舞伎の道へ進む主人公の青春。尾上菊之助の美声に酔いしれる21時間。
2位:カフネ
- 著者:阿部 暁子 / ナレーター:岸本 百恵
- 再生時間:10時間31分
- 魅力:2025年本屋大賞受賞作。食事とケアを通して傷ついた心を再生させる物語。岸本百恵の透明感ある声が、作品の持つ優しさを増幅させています。
3位:傲慢と善良
- 著者:辻村 深月 / ナレーター:雨宮 天, 松岡 禎丞
- 再生時間:14時間39分
- 魅力:現代の恋愛と婚活のリアルを抉るミステリー。アニメ界のトップ声優二人が、男女それぞれの視点から「傲慢さ」と「善良さ」を演じ分けた名演。
4位:成瀬は天下を取りにいく
- 著者:宮島 未奈 / ナレーター:鳴瀬 まみ
- 再生時間:5時間4分
- 魅力:滋賀県大津市が生んだ最強のヒロイン・成瀬あかり。クスッと笑えて元気が出る、2024-2025年を代表するエンタメ小説。
5位:国宝 下 花道篇
- 著者:吉田 修一 / ナレーター:尾上 菊之助
- 再生時間:22時間2分
- 魅力:上巻からの熱量そのままに、芸の頂点を目指す男たちの壮絶な生き様が描かれます。上下巻完走者が続出したことの証明。
■第6位~第10位:話題のビジネス書とオーディオファースト
6位:あっという間に人は死ぬから 「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方
- 著者:佐藤 舞(サトマイ) / ナレーター:乃依 実咲
- 再生時間:5時間18分
- 魅力:人気YouTuber・サトマイ氏による、後悔しない時間の使い方。「死」を意識することで「生」の質を高める、現代人のための処方箋。
7位:人魚が逃げた
- 著者:青山 美智子 / ナレーター:下妻 由幸, くわばら あきら
- 再生時間:5時間46分
- 魅力:本屋大賞ノミネート作。青山美智子氏らしい温かい人間ドラマが、複数のナレーターによって立体的に紡がれます。
8位:8番出口
- 著者:川村 元気 / ナレーター:梶 裕貴
- 再生時間:3時間10分
- 魅力:あのループ系ホラーゲームがまさかの小説化&映画化。川村元気×梶裕貴のタッグで贈る、聴覚を刺激する3時間の恐怖体験。
9位:こうやって頭のなかを言語化する。
- 著者:荒木 俊哉 / ナレーター:井上 悟
- 再生時間:3時間55分
- 魅力:電通のコピーライターが教える「モヤモヤを言葉にする技術」。音声で聴くことで、思考のプロセスがよりスムーズに頭に入ってきます。
10位:いただきます。 人生が変わる「守衛室の師匠」の教え
- 著者:喜多川 泰 / ナレーター:間宮 康弘, 生田 輝
- 再生時間:7時間3分
- 魅力:Audibleのために書き下ろされた「オーディオファースト」作品。喜多川泰氏の感動的なストーリーテリングが、音声ドラマのように展開します。
■第11位~第15位:映像化作品と宮島未奈の追撃
11位:誰かが私を殺した
- 著者:東野 圭吾 / ナレーター:寺島 しのぶ, 松坂 桃李 ほか
- 再生時間:2時間47分
- 魅力:東野圭吾初のオーディブル書き下ろし。豪華俳優陣によるフルキャスト朗読は、もはや「映画を聴く」体験。
12位:人は話し方が9割
- 著者:永松 茂久 / ナレーター:横居 将
- 再生時間:3時間26分
- 魅力:数年間ランキング常連のロングセラー。コミュニケーションの基本を繰り返し耳で聴いて身につける、リスキリングの定番。
13位:地面師たち
- 著者:新庄 耕 / ナレーター:河西 健吾 ほか
- 再生時間:9時間43分
- 魅力:Netflixドラマの大ヒットで原作も再注目。スリリングな騙し合いの心理戦は、音声で聴くと緊張感が倍増します。
14位:成瀬は信じた道をいく
- 著者:宮島 未奈 / ナレーター:鳴瀬 まみ
- 再生時間:4時間53分
- 魅力:「成瀬」シリーズ第2弾。大学生になった成瀬の活躍も安定のランクイン。
15位:婚活マエストロ
- 著者:宮島 未奈 / ナレーター:吉野 貴大
- 再生時間:6時間28分
- 魅力:宮島未奈氏の3作目。婚活業界を舞台にしたドタバタ劇。成瀬シリーズとはまた違う、大人のユーモアと哀愁が楽しめます。
■第16位~第20位:未来予測から往年の名作まで
16位:世界の一流は「休日」に何をしているのか
- 著者:越川 慎司 / ナレーター:高城 亨
- 再生時間:3時間3分
- 魅力:働き方改革の次は「休み方改革」。短時間で聴き終わるため、週末の朝に聴いて即実践できる実用性が支持されました。
17位:夜行観覧車
- 著者:湊 かなえ / ナレーター:安田 章大
- 再生時間:9時間53分
- 魅力:湊かなえのイヤミス(嫌な気分になるミステリー)の名作。SUPER EIGHTの安田章大氏の語りが、崩壊していく家族の不穏さを際立たせます。
18位:僕が若い人たちに伝えたい 2035年最強の働き方
- 著者:ひろゆき(西村 博之) / ナレーター:北口 聖
- 再生時間:4時間16分
- 魅力:これから来る未来をひろゆき流に魅力。若年層を中心に、キャリア構築の指針として聴かれました。
19位:アルジャーノンに花束を 〔新版〕
- 著者:ダニエル・キイス / ナレーター:池澤 春菜
- 再生時間:14時間12分
- 魅力:不朽の名作SF。主人公・チャーリイの知能の変化を、池澤春菜氏が声の演技だけで表現しきる「神業」は必聴です。
20位:連続殺人鬼カエル男
- 著者:中山 七里 / ナレーター:藤田 幹彦, 前迫 愛朱佳
- 再生時間:12時間29分
- 魅力:どんでん返しの帝王・中山七里の代表作。グロテスクかつスピーディーな展開で、続きが気になって眠れなくなる作品。
■第21位~第25位:個性派ミステリーと教養の大著
21位:滅茶苦茶
- 著者:染井 為人 / ナレーター:大久保 多聞
- 再生時間:12時間0分
- 魅力:タイトル通りの予測不能なクライム・サスペンス。群像劇が収束していくカタルシスが魅力。
22位:アルプス席の母
- 著者:早見 和真 / ナレーター:河井 春香
- 再生時間:11時間49分
- 魅力:『店長がバカすぎて』の早見和真が描く、高校野球の「応援席」の物語。母たちの熱いドラマに涙する人多数。
23位:NEXUS 情報の人類史 上: 人間のネットワーク
- 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ / ナレーター:山口 令悟
- 再生時間:11時間14分
- 魅力:『サピエンス全史』のハラリ最新作。情報の歴史から現代のAIリスクまでを説く、2025年必聴の教養書。
24位:コンビニ人間
- 著者:村田 沙耶香 / ナレーター:大久保 佳代子
- 再生時間:3時間42分
- 魅力:芥川賞受賞作。タレントの大久保佳代子氏による朗読が、「世界とズレている」主人公の淡々とした狂気を見事に表現しています。
25位:爆弾
- 著者:呉 勝浩 / ナレーター:星 祐樹, 品田 美穂
- 再生時間:12時間51分
- 魅力:取調室での対話のみで進行する心理サスペンス。「このミステリーがすごい!」上位作は、音声で聴くとまるで舞台演劇のような緊迫感です。
まとめ:2026年はどうなる?
25作品を振り返ると、「俳優・声優の演技を楽しむ」という要素がかつてないほど強まっていることがわかります。 単に情報を得るだけでなく、「プロの声で物語に没入する」というエンターテインメントとしての地位を確立したAudible。 通勤時間の相棒として、あるいは休日のリラックスタイムの楽しみとして、2026年も私たちの耳を豊かにしてくれることは間違いなさそうです。
まだ聴いていない作品があれば、ぜひこのランキングを参考に、新しい「聴く読書」の扉を開いてみてください。